職業の未来





 「将来なりたい職業」を選んで、
 そのことについて調べるという課題が出たらしく、
 自宅でネットなどを見て調べているようでした。

 なりたい職業は「ゲームクリエイター」を選んでいたので、
 なぜそれなのかと聞いてみると、
 「40個ぐらいの中で、これが一番楽しそうだった」とか。

 たった40個の職業の中からしか夢を選ばせないというのも
 教育的にどうなんだとは思いますが、
 最近はファミコンミニを遊んでゲームが好きになって
 Scrathなど入門的なプログラミングなどを触っている
 ようですし、楽しそうに課題に取り組んでいました。


 そして、その課題の中で、
 「その職業になるために、やらなくてはならないこと」
 というものを書かなければならなかったらしく、
 そこでつまずいて、妻に教えてもらいに行ってました。

 妻は何やらいろいろ教えていたようですが、
 「そういえば、お父さんは昔ゲーム会社にいたから、
  お父さんに聞いたら分かるんじゃない?」
 と途中で思い出したらしく、長男に伝えたので、
 長男が私のところに質問しに来ました。

 そういえば自分も以前はゲームクリエイターだったわ、
 とすっかり忘れていて、長男も私がゲーム会社で
 ゲームを作っていたことを知って驚いていました。

 「ゲームクリエイターになるために、
  やらなくてはならないことは何か」

 に、どのように答えてあげるか。

 皆さんならば、どんなアドバイスをするでしょうか。


 ところで、その40個の職業から選ぶという宿題、
 自分が選んだ職業の概要が書いてあるプリントが
 渡されており、長男に見せてもらいました。

 すると、「ゲームクリエイターとは…」という説明では
 「100人を超える規模のチームで大きなプロジェクトに
  取り組み、その作業は細分化されていて…」
 などと500文字ぐらいの説明が書かれていたのですが、
 「いやいや、古い古い」と思ってしまいました。

 確かにコンシューマー機の大作ゲームを作るとなると
 何十億円という大規模な予算で、100人以上のチームが
 ものすごい時間をかけて取り組むものですが、
 それはもう大手の上位数十社だけの話です。

 多数のゲーム開発会社はそんな環境ではないし、
 そもそもコンシューマー機だけがゲームではない今、
 スマホアプリを個人で作る人もゲームクリエイターですし、
 カードゲームをデザインする人もゲームクリエイター、
 謎解き脱出ゲームを企画する人もゲームクリエイター、
 テーブルトークRPGの仕組みを作る人も、
 ゲームブックを作る人も、どれもこれもゲームクリエイター。

 コンシューマー機のゲーム以外にもゲームの概念を
 広げられる人は、みんなゲームクリエイターなのです。


 そして、9歳の長男から質問された 
 「ゲームクリエイターになるために、
  やらなくてはならないことは何か」
 という疑問に対する答えですが、私の答えは、


 「ゲーム以外のことを、めちゃめちゃ遊びまくる」


 ということでした。

 すると、長男は先に聞いた妻からは、
 「多分、ゲームをたくさん遊び、たくさん研究すること」
 と教わったらしく、
 「お母さんと言ってることが逆だ!」と驚いてました。


 なぜ、ゲームの仕事を目指すのに、
 ゲーム以外のことをたくさんやらなければならないのか。

 それは、ゲーム会社にいた時に
 多くのゲームクリエイターと一緒に仕事をしたり
 多くのゲームクリエイター志望を面接したりした時から
 ずっと思っていることです。

 ゲームクリエイターを目指している人には、
 ゲームのことは詳しいが、ゲームのことしか分からない、
 という人がものすごく多くいました。

 しかし、例えばドラゴンクエストを研究し尽くした人は、
 結局はドラゴンクエストみたいなゲームしか作れないのです。

 それよりも、ゲームはほとんどしたことがないという人でも、
 例えばバイクがレースに出ているほど好きだとか、
 キャンプのことをイベントに呼ばれるほどに詳しいとか、
 服作りが自分で売っているほど大好きとか、
 ゲーム以外のことに突き抜けている人であれば、
 めちゃくちゃ面白いゲームを作ってくるのです。

 それは、ゲーム以外のことから
 「何がゲーム性として面白いのか」を見抜いて、
 それをゲームの世界に持ち込んでくるので、
 今までにない新しいものを生み出すことができるのです。


 だから、小学生だったらゲームを研究するよりも、
 野山を駆け巡ってもっと昆虫や草木に触れてほしいし、
 地図を見ながら探検したり、お絵描きをしたり、
 星を眺めたり雲の動きを見たりしてほしいのです。

 街や自然の中から気になることをいろいろ発見し、
 いろんな人との出会いで人間関係を体験していった上で、
 「これをゲームにしたら面白いんじゃないだろうか?」
 と気づいて初めて、
 本当のゲームクリエイターの魂が生まれるのだと思います。

 その「ゲームにしたら」というものが、
 コンシューマーゲーム機とは限らず、
 スマホアプリでもいいし、リアルイベントでもいいし、
 カードゲームでもいいわけです。

 ゲーム以外のことに精通していない限り、
 次世代の新しいゲームは作れないと、私は思います。


 「ゲームクリエイターとは、こういう職業である」
 といった現況の解説は、もう古くなっていて、
 特に子どもが大人になった頃には全く変わっているでしょう。

 例えば「消防士とは、火事になったら出動する」という
 当たり前の表記にも、もう十数年語には、
 「全部ドローンがやるので、消防士は出動しない」
 という世の中になっているかもしれないのです。

 「学校の先生とは、教室で登壇をして…」と言っても、
 未来では教室がないかもしれないし、
 全部AIがやっているオンライン講習かもしれません。

 あらゆる職業の説明が、数年後には古くなっているでしょう。


 自分たちの職業は、どのように言い表せるでしょうか。

 そして現在の自分たちの職業が、
 未来ではどう変わっているかそれを考えると、
 今だけを考えて仕事をするのは先行きが怪しいし、
 現状だけを分析して就職活動をするのはもったいない。
halcyonoize01
  • halcyonoize01

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